今より通じるカタカナ−その1

(※今回はタイ、ラオス、カンボジアの情報です。ベトナム、ミャンマーの情報はありません。)
世の中は「全く通じないカタコト」で溢れています。夏目漱石や森鴎外の時代ならともかく、(金銭的な問題では)誰もが海外旅行に行けるようになった昨今、「小説で取り上げた時の読みやすさ」よりも、「現地人と会話した時の通じやすさ」を念頭として外国語に仮名を振ったほうが有益なのは間違いありません。
「もっと多くの人に旅行に来て欲しい。」「来たからには存分に楽しんで欲しい。」と思っている先駆者たちが、まだ行ったことがない人たちに対して「通じない現地語」を広める必要性がどこにあるでしょう。
今回は、タイ、ラオス、カンボジアの『地名』について、「こうやって言い換えよう」を大々的に列挙したいと思います。
(※文字と発音はリンクをクリックして下さい。なお、三言語ともにガ行、ヂャ行で書いているものは完全な濁音ではなく、カ行、チャ行の無気音です。敢えて有気音と無気音をなるべく区別するために濁点を入れていますが、実際は若干籠る程度で問題ありません。また、カンチャナブリーやコンポントムなど、「そのままで通じる」としているものは、濁点への訂正は省いております。)
○特に変える必要なし
🇹🇭トンロー
🇹🇭アユタヤ
🇹🇭パタヤ
🇹🇭ルンピニー
🇹🇭バンナー
🇹🇭ロッブリー
🇹🇭サラブリー
🇹🇭カンチャナブリー
🇹🇭ウドンターニー
🇱🇦ルアンパバーン
🇰🇭プノンペン
🇰🇭ストゥントレン
🇰🇭コッコン
🇰🇭コンポンスプー
正確に言えば、アユタヤはアユゥタヤー、パタヤはパッタヤー、プノンペンはプノ(ム)ペ(ニュ)ですが、そう書くと却ってイントネーションが崩れたり、末子音に母音を足してしまって不都合が生じます。上記はそのまま覚えるのが最良でしょう。
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○末子音さえ気を付ければ
🇹🇭バンコ(ク)
🇹🇭プーケッ(ト)
🇱🇦パ(ク)セー
🇰🇭コンポント(ム)
🇰🇭コンポンチャー(ム)
🇰🇭トンレサップ→ト(ヌ)レーサー(プ)
書く側としてはどうしようもない問題です。基本的には、なぞる側も日本語的に「全部の仮名に母音を付けよう」というスタンスではなく、二重子音や末子音が多くあることは常に頭に入れておくべきです。
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※とにかくイントネーションに注意
🇹🇭シーロ(ム)
🇹🇭サヤー(ム)
🇹🇭アソー(ク)
🇹🇭ラヨーン
🇹🇭ノンカーイ
🇹🇭ラ(ム)カ(ム)ヘン
イントネーションも、勝手にイタリア語っぽく喋ってしまうのは大きな間違いです。特にタイ語の長母音はイタリア語と正反対のイントネーションを伴うこともしばしばです。例えるなら、サヤーム駅を「サイアム」と言われると、タイ語を知っている日本人はついつい「正確にはサヤームだよ。」と訂正したくなりますが、詳しくない人が「サヤーム」で覚えてしまうとイントネーションが大きく崩れるので、旅行者相手には「サイアム」で会話を進めるほうが実は親切だったりもします。
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△通じるけど違和感
🇹🇭チェンマイ→チアンマイ
🇹🇭チェンライ→チアンラーイ
🇹🇭ヤワラート→ヤオ・ワラー(ト)
🇹🇭プロンポン→ポ(ロ)ー(ム)ポン
🇹🇭プラカノン→パ(ラ)カノーン
🇱🇦ビエンチャン→ウィアンヂャ(ヌ)
🇰🇭シェムリアップ→セィア(ム)リアッ(プ)
🇰🇭アンコールワット→アンゴーウォアッ(ト)
🇰🇭プレアビヒア→プレアウィヒア
🇰🇭アンロンベン→ア(ヌ)ロンウェーン
🇰🇭ラタナキリ→ロッタナキリー
🇰🇭サンボープレイクック→ソ(ム)ボープレイゴック
傾向として、タイ語の場合は二重子音の第一子音に、二つ目と同じ母音を足すべきところ、”u”を足してしまうケースが最も厄介です。魚醤のことをナンプラーと言えば、「いやいやナ(ム)パ(ラ)ーでしょ。」と再教育されます。(他方、カンボジア語はヨーロッパ系言語と同様の二重子音で問題ありません。)
ラオス語とカンボジア語については、フランス人が書いた英字に対し日本人がイタリア読みで仮名を振って、滅茶苦茶になっているケース(”ə”が”e”で書かれるせいで「ア」でも「ウ」でもなく「エ」に変えられたり、”o”に近い音をフランス人が”a”で書き、日本人がそのまま「ア」にしたり。)が一つ目。”v”がワ行ではなくヴァ行で書かれているせいで、バ行に書き換えられたり、バ行で発音させてしまうケースが二つ目です。
「ヴァ行とバ行どっちだったかなあ」ということを日本人がいくつも完璧に思い出すのは非常に難しいので、最初からワ行で覚えましょう。そもそもラオス人は外来語や外国人相手の格好付け以外ではヴァ行を用いませんし、カンボジア人も個人差こそあれど「ワ行とヴァ行の中間で、どちらかというとワ行に近く、ほんの僅かに濁った音」を発しているに過ぎません。最初から”v”をワ行で書いて覚えれば、何も問題が起こらないのです。
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×勝手に改名すんな
🇹🇭クラビ→ガ(ラ)ビー
🇱🇦バンビエン→ワンウィアン
🇱🇦サバナケット→サワンナケー(ト)
🇰🇭バッタンバン→バッド(ム)ボーン
🇰🇭ベンメリア→バゥンミアリア
🇰🇭ケップ→ガエッ(プ)
🇰🇭シハヌークビル→セィアノゥ・ウィウ/プレア・セイハノゥ
🇰🇭カンポット→ゴ(ム)ポー(ト)
🇰🇭バベット→バーワゥッ(ト)
前段の諸々の問題も、あまりに酷い場合には違和感を与えるどころか、ほぼ通じなくなります。上記で最も壊滅的なのは「シハヌークビル」ですが、後半でズッコケているだけで前半は惜しいのと、他に想像できる単語もないので奇跡的に通じる可能性はあります。
それ以外は、よほど日本人の言い癖に精通しているか、想像力が豊でないと現地人は理解してくれないでしょう。リンクをクリックしてネイティヴの発音を聞かれれば、左に比べて右がどれだけ進歩的かをお分かり頂けるはずです。
×梅田ぐらい難しい
🇹🇭パンガン→パグャン
🇹🇭プルンチット→ポ(レ)ンヂット
上記は「片仮名でどう書こうが通じない可能性が高い」地名です。サムイ島の北にあるパンガン島は、”Pan-gan”ではなく”Pa-ngan”です。”Phloenchit”は母音(ə)、二重子音(phl)、無気音(ch)、末子音(t)、イントネーションと難しいことだらけです。
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